(09/7/7追記)「日本語というだけで英語圏との情報共有ができない」という話はどうしたら過去の課題になるか

※追記は最下部にあります

ここのところ、仕事で翻訳自体ではなく「翻訳フレンドリーな環境を構築するには?」ということを考えることが多かったのですが、同じアイデアは「日本語コミュニティと英語コミュニティで情報交換ができない」現状を打破する役に立つのではないか? と考えてみた。

先日書いた自動翻訳がどのように進化していくのかをベースにして、仮説の上に仮説をのっけていくことになりますんで話半分に聞いていただければ良いなと思います。

翻訳フレンドリーなオーサリング

先日も少し書いたとおり、機械翻訳の精度が高まるにつれて「どうやったら機械が翻訳しやすいコンテンツを書けるか」という点が注目を集めつつあります。
これには次のような要素が重要になります。

  1. 使う用語を統一する
  2. あいまいな言い回しを避ける
  3. 簡潔な文章を心がける
  4. 何通りもの解釈が可能な文章を書かないようにする
  5. 表記スタイルを統一する (句読点や漢数字/数字の使い方など)

これらは翻訳後のコンテンツの品質を大きく左右するものですが、現状はあまり意識されていません。それよりも「期限内に記事を仕上げる」ことや「マーケティング的に受けるものを書く」などの要素のほうが優先順位が高いためです。

私の意見ですが、あと少しテクノロジーが進歩したら、上の5要素の優先度は多くの企業でグググググッとあがることになると思います。
マーケティング資料などは性質上難しいのでしばらくそのままだと思いますが、技術文書やそのほか事務的な情報についてはまず間違いないでしょう。

それは分かったけど、日英コミュニティ間での障壁については何が起こるわけ?

おそらくGoogle的な何かが、「特定の分野」について「かなりの精度」「自動翻訳」する「無料」サービスを提供するでしょう。
LYEの予想では、たぶん2014年くらいにはアーリーアドプタ−の皆さんが普通に使うくらいになっていると思います。

そうすると、最初に実用レベルに達するのは「たくさんの対訳テキストが集まった分野」=「技術的なコンテンツ」になり、OSSプロジェクトなど(※翻訳がボランティアで運営されているため)著作権的な問題をクリアできる文書は特に高い品質を得られるようになるとLYEは考えます。

ここまできたらあとはシンプルです。
皆がある種の形式に沿ってものを書けば(あるいは間に入ったソフトウェアがそれを適宜解釈して調整すれば)、かなり高い精度で別の言語に自動翻訳されるようになる。
そうしたら、昨今の PC ゲームによくある「あいさつなどの定型文を選ぶと、他ユーザーの言語ロケールに合わせて表示される」の進化版みたいな感じで、少なくとも文字ベースでのコミュニケーションで壁がなくなる。

メッセンジャーなんかでも使われそうですね。

で? それが実現するとして、今何しとくといいわけ?

...特に無いです。
今から簡潔であいまいでない日本語を書けるようにしておくと「もしかしたら」役立つかもしれません。

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あー、こうして書いてみたら思ってたこと整理できた。
また思うことがあったらめんどくさがらずに書くようにしよう...

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ブクマコメントを受けての追記:

id:khiroaki 翻訳, 英語 自動翻訳しやすい文章の表現力なんてたかがしれてる 少なくとも発信者にとってそれは望まれないし、結局現状打破にはならないよ

私もその新しい「翻訳メモリベースの自動翻訳」が既存のフォーラムなり技術サポート情報ページなりを完全に置き換えるものとして導入されるとは思っていません。
発言/発信するユーザーに配慮してもらう必要が生じるので、もし実現してもおそらく試験的な別枠として導入されることになるでしょう。
また、もちろん上述のとおり、マーケティング資料などの「心に響かせる」ことを目的としたテキストはこれからしばらくは手動で対応されていくことになると考えています。


ただ、Microsoftの技術サポート情報は現在でも、(おそらく記事の重要度によって優先順位付けされた後) 機械翻訳されています。
こういったページはどの程度役に立っているか不明ですが、少なくとも英語圏以外の人にとっては「ないよりも絶対にいい」コンテンツであることは間違いのないところではないでしょうか。

私が想像しているのは、id:yamuyam さんが仰られていたような「日本語の文章を入力したら、内部的に英語に翻訳、それを日本語に再翻訳して元の文章と比較し、その文言が違っていれば「コンパイルエラー」を吐く、みたいなIDE」を間に挟んで運用される「翻訳メモリベースの自動翻訳」対応フォーラムや、技術資料項改ページなどです。こういった分野では、内容を「心に響かせる」必要はないので、純粋に情報の交換/提供ができるようになるのではないか、と。


「質問したいことがあるけれどそこまで込み入ったことは英語で書けない人」にとって、「自分の頭の中にあるイメージをシンプル&ストレートな言葉に変換さえできれば、他言語ユーザーにも読んでもらえる環境」は (そしてどこかの頭のいい人がその数歩先を行くようなソリューションを発明できれば)、現状よりも参加の敷居が低いものになるのではないかと想像しています。

もちろんそのようなフォーラムでは、ユーザー、特に回答者の「善意」というものがとても重要になってくるとは思いますが、その点についてはこれまでにも様々なサービスで実績がありますし、情報を提供しあえるようなギブアンドテイクの関係が築ければ、そう難しいことでもないのではないでしょうか。

いち翻訳者のちょっとした妄想であってアナリストの予想でもなんでもないので、ハッキリしたデータや資料を提示できないのが心苦しいのですが、現場の空気を吸いながらITニュースを眺めている限り、そういう未来が来る日もそう遠くないのではないかな、と思う次第であります。