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EXCELとゲーム翻訳者の仲介役! felixノススメ

localization

あんなに期待していたLocalizeDirectはどうも翻訳メモリやら用語集の統合ができないようです。それじゃフィルタ機能以外に翻訳者に利点がないよ… という感じで、業界のデファクトスタンダードはEXCELなんだなと再認識したので、自衛措置として「EXCELの天下はしばらく続く」という前提のもとに自分の作業環境をさっさと整えようということになりました。

探すにあたってのテーマは「用語集や既存訳を脳みその中に展開して」作業しなくていいようにしてくれるツール。本当はQAチェックができたり、バージョン管理ができるようなソフトがあればいいんだろうけれど、そのあたりは今回は諦める。ひたすらに、「EXCEL上で最低限のCATテクノロジーが使えるツール」を探しました。

そうして見つかったのがFelixというツール。こいつは基本Wordで使うものみたいですが、Excelにも対応しており(この他PowerPointにも対応している)、自分の求める具体的な要件をほぼ全て満たしていました。

要件とは

  1. EXCELのまま作業できる=ツール専用の作業ファイル形式に変換しなくてもよい
  2. 翻訳メモリと用語集を参照し、マッチを表示してくれる(どちらも自動で)

この2点だけ。なぜこの2点なのかは以降で説明します。

「EXCELファイルに対応していて、かつ作業ファイルに変換しない」がなぜ要件か

これを説明するには、まず「なぜゲーム翻訳はEXCELで行われているのか?」と「変換することの短所とは?」を説明する必要があるので、箇条書きにまとめてみます。

なぜゲーム翻訳はEXCELで行われているのか?
  1. String ID、原語、訳語、補足情報など、1レコードに入れる情報が大量にあるし、そのカスタマイズ性が高い
  2. レコード数が大量にあるが、編集も頻繁に入るので、誰でも編集できる形式が求められる
  3. 開発時に制作した資料を流用したりするにはEXCELが便利だから。誰でも使えるみんなのEXCEL!
CATツールの変換機能とは?
  1. 例えば XLS→XLIFFのようなもの。
  2. CATツールのエディタで開くファイルは、多くの場合「多言語データを扱うための専用形式」に変換される。例えばSDL TRADOSではTTX、SDLXではITD、SDL TらドsStudioではSDLXLIFF、Open Language ToolsならXLIFFなど。
  3. ゲームの翻訳対象ファイルは「なんちゃってデータベース」のように使われるため、翻訳対象のセルは1列だけに集中していることが多い(A列:GUID、B列:String ID、C列:原文、D列:翻訳文など)。
  4. CATツールは基本的に「文書の中身は全部翻訳するもの」として扱うので、一部だけを翻訳可能な状態にすることはできない。迂回策として「翻訳対象外文字列を "非表示" や"隠し文字 (Word)" に設定してから変換する」方法もあるが、これではせっかく用意されているString IDや文脈情報などの情報を参照しながら翻訳ができない。
つまり
  • 開発者が用意してくれる文脈情報は、翻訳対象文字列の隣のセルにあることが多い。
  • そして多くの翻訳支援ツールでは変換やらのせいでそれが見えなくなる、ないし見えにくくなる。
  • だから文脈情報を全部見るにはEXCEL上で直接翻訳メモリを参照できないと無理。

という理由で、上のふたつが要件になったわけです。そしてFelixは両方をクリアしてるンス。

felixの紹介

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概要は興味のある方のみ、公式ページをご覧ください。LYEはEXCEL上でゲーム翻訳するときにどれだけ翻訳者が助かるかの話しかしません。

なぜそんなにお気に入りなの?
  1. だって「文脈に関する情報を確認しながら仕事ができる」んだよ!
  2. なのにちゃんと既存訳文と用語集を自動ルックアップしてくれる!
    f:id:LYE:20100927191735j:image
    ※原文/訳文はFallout3 DLCのファン翻訳からお借りしました
  3. 範囲ドラック選択→メニューで[グロッサリ/翻訳メモリに一括登録]すれば用語集や翻訳メモリをサクっと作成/更新できる! 新規案件のスタートアップが楽!
  4. EXCELファイルを変にいじらないので、「翻訳ベンダーが採用していなくても、翻訳者が勝手に使ってしまえばいい!」
  5. 地味に良い点として、用語集の検索条件にFuzzy一致率が設定ができる(Apples が用語集にあったら、Apple が出てきてもルックアップしてくれる)
逆に欠点は?
  1. QAツールがない。用語集準拠チェックと表記スタイルチェックが付いたらうれしいけれど、現状だとれはマクロやら外部ツールで対応するしかない。
  2. 現状、翻訳完了→次の作業セルへの操作を行うと横にあるセルに移動する。しかも設定を変更できない。ゲーム翻訳者としては下に行って欲しい。ただこれについては機能追加のリクエストがあがっており、作者も乗り気であるため、そのうち改善されるであろう。
  3. 翻訳メモリや用語集から情報を引き出して挿入すると、原文が全部クリアされる。これは割とめんどくさい。クリアせず挿入してくれたら嬉しいのだけれど。と書いていて気づいたので今度リクエストしてみる。
  4. ショートカットがALT+1 、2、3などに設定されているため、人によってはEXCELのカスタムショートカットキーとかぶるかも。事実僕はかぶった。そして原文がクリアされる問題と重なって結構悲しい結果になった。
  5. 上の欠点などにより誤ってクリアしてしまった場合、セルのUndoがきかない。つまり「あ、まちがえて翻訳ほぼ終わっていたセルに用語集から用語を挿入してEnterしちゃった→翻訳消えて用語だけのまま翻訳確定→CTRL+Zしても帰ってこない僕の訳文」という悲しいことになる。これも今度リクエストしよう。するだけしよう、そうしよう。

大作ゲームともなれば、固有名詞に対応する訳語だけでも脂汗が出るほど多い。そういうとき、いちいちGrep検索したり(EXCEL検索なんて僕は絶対しませんよ!)、作業中ずっと脳みそに刻みこんでおくことに一体何の意味があるのよThis is 21st Centryですよ!と僕は叫ぶわけです。

一生懸命用語の対訳集を記憶したって品質は上がらないし、誰も得しない。それなら21世紀らしく楽に品質が上げられる方法を模索したい。今のところ、LYEの最適解はこれです。

まだ人に説明できるほど使い込めていないので、使い方の概要はもう少し慣れてから書こうと思います。