メーカーも気にするゲームスコア

  • この翻訳文は 2008/01/05 に LYE が旧ブログで公開したものの転載です。2 年以上前の古い記事ですので、実情のほか、役職名、社名などが現在とは異なる点があります。ご了承ください。

以下、転載



dekunology 管理人の Dekubar さんに教えてもらった
The Wall Street Journal.com: High Scores Matter To Game Makers, Tooを翻訳しました。例によってお約束。

翻訳・要約担当者からのまえがき

  • 注意 1:文の流れ等が悪く、論理的に乱暴であったり無礼に見える箇所もあるかもしれません。それらは私の能力不足によるものです。そう感じる方がいらっしゃいましたら素直に謝ります、ごめんなさい。また、興味のある方は原文を読んでみてください。
  • 注意 2:で、結局結論は?と言われるとアレなのですが、「海外のレビュー事情を知る」、ということを目的として一読いただければ幸いです。
  • 注意 3: 例のごとく誤訳がある可能性と、コンテンツはすべてソース英語サイトさまのものであることをここに明記します。



メーカーも気にするゲームスコア

By NICK WINGFIELD
September 20, 2007; Page B1

SANTA MONICA, Calif. -- 映画業界には Roger Ebert 氏が、ワイン業界には Robert Parker 氏が、そしてゲーム界には Marc Doyle 氏がいる。

Doyle 氏は Metacritic のゲームレビューの編集担当者だ。Metacritic は彼が共同設立した Web サイトで、その影響力はゲームの販売本数やゲーム開発会社の株価にまで及ぶ。ある企業などは、このサイトでのスコアに応じてパブリッシャーに請求する著作権使用料を変化させるほどだ 。

しかし彼の提供する批評が物議を醸す一方で、彼自身はめったにゲームをプレイしない (代わりに趣味のバンジョーを弾く) 。彼はゲームメーカーとの交流にほとんど興味がないのだ。去る 7 月も、彼は新作新発表で盛り上がる E3 に ― 彼の自宅から会場までほんの数ブロックしか離れていないにもかかわらず ― 足を運ばなかったほどだ。 「僕がショーの目玉なわけじゃないしね」Doyle 氏は言う。

一方で、彼が製作に携わったシステムはビデオゲーム業界の様々な局面で中心的な役割を果たしている。Metacritic は 100 を超えるパブリケーション (雑誌、Web サイトなど) のゲームレビューを集計し、100 点満点の得点で平均値を出す。ゲーマーはこのスコアを参考にして新しいゲームを購入する。Metacritic では他にも映画や音楽などのエンターテイメントに関するスコアも掲載している。

しかしこの種のレビューサイトはビデオゲームのスコア掲載を避けることが多い。顧客にとって 1 本 50 ドルも 60 ドルもするゲームを購入するのは 10 ドルで済む映画チケットの値段よりも敷居が高いからだ。

一部のゲーム会社ではこういったサイトのスコアを開発会社のボーナス査定基準として使用している。また新タイトルの評価が低スコアだったという理由でパブリッシャの株価が下落したこともあった。「一般的な希望は 85 点以上、といったところじゃないでしょうか」と LucasArts (サンフランシスコ、Lucasfilm Ltd のゲーム部門) プレジデント Jim Ward 氏は言う。

ゲームパブリッシャ Activision Inc. は 2 年前、製品品質の向上を促進するために Game Rankings というサイトのスコアを社内のボーナス額決定要因とした。 Take-Two Interactive Software Inc. も同社のスポーツゲーム制作会社に類似するポリシーを導入している。

現在 Metacritic と Game Rankings は両方とも CNET Networks Inc. が所有している (Game Rankings は Metacritic とは異なり、ゲームスコアのみを専門としている)。

18 カ月前、 Activision が PS2 のゲーム 789 本について実施した調査では、ゲームスコアの高さと販売本数には強い相関関係があるという結果が出た。 Activision のチーフエグゼクティブ Robert Kotick 氏は、この傾向は Game Rankings のスコアが 100 点中 80 点を超える場合に特に顕著だという。同調査ではまた、80 点以降は 5 ポイントごとに販売本数が倍になるという結果も出ている。この調査から、Activision はゲームスコアはゲームの品質だけでなく、その販売本数にも影響を及ぼすと考えている。

Metacritic と Game Rankings のスコアは通常、公式な販売本数データの発表よりも前、ソフトの発売直後に発表される。このため、新タイトルのスコアにはウォール街も注目する。2007 年 5 月初旬、Activision の新作ゲーム Spider-Man 3 が発売になった (レビュースコアはあまりぱっとしなかった) 際、 PS2 版の Metacritic スコアは 50 点だった (前作 Spider-man2 は 80 点) 。

次の月曜、一部の経済アナリストが Spider-Man 3 のスコアの低さは Activision の懸念材料と考えられうると分析し、 その日 カリフォルニア州サンタモニカの同社の株価は 5% 下落、株価はその週の間下がり続けた。反対に 8 月には BIOSHOCK で 97 というほぼ完ぺきな Metacritic スコア (その後レビュー数が増えて 96 に修正された) を獲得した Take-Two の株価は約 20% 上昇している。

これらの要因すべては、Metacritic の Doyle 氏が 74 億ドル市場である米国のゲーム産業における比類なきキングメーカーであることを表している。彼は Metacritic の評価システムの管理者であり、スコアリングに含めるパブリケーションを決定している。このリストには GameInformer のような商業雑誌や New York Times、ゲーマー Web サイト Fourfatchicks.com*1 やその他の店舗なども含まれる。 サウスカリフォルニア大ロースクールを卒業した Doyle 氏が妹 Julie Doyle Roberts 氏とロースクールのクラスメイト Jason Dietz 氏と共同で Metacritic を立ち上げたのは 2001 年 1 月のことだ。 Doyle 氏は立ち上げ後、インターネットは個人的な偏向を最小限に抑えられるため、各種レビューの配信に向いていることに気づいたという。Rotten Tomatoes (現在は News Corp 所有) のようなサイトではすでに映画のレビューを提供していたものの、 Doyle 氏とそのパートナーたちはより多くのメディアを網羅することの可能性を認識していた。3 人は 2 年前にサイトを CNET に売却したが (価格は未公開)、 Doyle 氏 (36) は現在 CNET のシニアプロダクトマネジャーとして勤務する傍ら Metacritic のゲームエディタとしても活動している。

こんにち、レビューが公正でないという理由で特定のレビューを Metacritic スコアから除外するよう申し立てるパブリッシャは多い。「英国のパブリケーションはアメリカンフットボールのゲームに偏見があり、評価が不当に低い」といった具合だ。しかし彼は一度システムに追加したパブリケーションを申し立てに応じて個別に除外することに応じようとしない。

サイトのスコアは補正された平均値であり、特定のパブリケーションのレビューについては Doyle 氏が有意性を割り当てている。彼はスコア計算の公式を明かそうとせず、 Metacritic の企業秘密だと話す。

一部のゲームレビュアは Metacritic のスコア算出方法に不満があるという。多くのゲーム関連パブリケーションが 100 点満点で評価するが、一部のレビューには学校の通知票のようなアルファベット評価を採用している。こういった場合 Doyle 氏は A を 100 点、F を 0 点のように計算するが、レビュアにとっては F は 50 点くらいを意味する場合がある。スコアがない場合には、レビュアが独自に Doyle 氏に対応する得点を送ることもあると言う。

「Metacritic のゆがんだ鏡のような換算スキームに対する私たちの評価は F+ ですね」とレビューサイト Game Revolution の元エディタ Joe Dodson 氏は言う。彼は昨年 Metacritic や類似サイトを批判するエッセイを発表した。 Dodson 氏の最大の不満は、Metacritic の文字評価 <=> 数値スコア変換システムでは Game Revolution のレビュースコアの数値が低く換算されすぎるというものだった。

Metacritic のスコアは常に正確な売上予測となるわけではない。これは特に映画をベースにしたゲームに対して言える。人気の高いマーケティング力のある映画は厳しい批評を受けるゲームの売上も押し上げるからだ。 比較的低いスコアを獲得したにもかかわらず、Activision の Spider-Man 3 は (米国で 400 万本を売り上げた) Spider-Man 2 に迫る販売本数になると分析されている。これはシリーズの第一作を超える数字だ。

しかし多くの経営者は、間接的ではあるかもしれないが販売本数とスコアには関連性があると言う。ゲームビジネスは今やフランチャイズ志向 (シリーズもの) に- (続編やスピンオフタイトルを制作し続けるコンセプト) シフトしており、そういったシリーズのタイトルが低評価を受けると長期的な販売本数に悪影響を及ぼす、というのがメーカー側の考えだ。

「シリーズ一作目をヒットさせるよりも、2 作目をしっかり売ることのほうがはるかに難しい」と、世界最大のパブリッシャ EA のゼネラルマネジャー Neil Young 氏は言う。3 年前、Time Warner Inc.'s Warner Bros. は同社の映画をベースにしたゲームの品質に満足できず、対策を講じた。その際に Warner のゲーム責任者 Jason Hall 氏が採用したのが、"quality metrics (品質マトリクス) "だ。この手法は、スタジオと Warner 映画のライセンスゲーム制作に関心のあるパートナーの間に適用される。

手法は要約すれば、パブリッシャが発売するゲームが Metacritic/Game Rankings などで特定のスコアを超えなければ、ゲームに対する著作権使用料が上がる、というものだ。 Warner のスポークスマンはこのスタジオのポリシーがゲームの品質に与える影響を判断するにはまだ早いと言っている。

かつては熱心なゲーマーであった Doyle 氏は近いうちにゲーマーライフを再開するという。このホリデーシーズンの良作ラッシュに魅了されたので最新ゲーム機を買う予定だと。どのゲーム機を購入するのかについては言及しなかったが。


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id:dekubar さんに意味深なタグいただきました! 氏にリンクを教えてもらったのも 2 年前ですか... 時が経つのは早いです。最近ご無沙汰していますがブログ読んでます! これからも頑張ってください。

*1:現在は http://tap-repeatedly.com/ にリダイレクトされる模様