米/日で表情の読み取り精度を比較した論文(1992年)を適当につまんでみた
1992 American-Japanese Cultural Differences in the RECOGNITION OF UNIVERSAL FACIAL EXPRESSIONS
http://www.davidmatsumoto.info/Articles/1992%20American-Japanese%20Cultural%20Differences%20in%20the...pdf
※ リンク先 PDF です。
※ 自分が読みながらメモったものを適当に整形しただけなのでものっそいフランクな口調ですが、原典はしっかりノイズが混じらないようにいろいろと対策を講じているので、興味がある方は原典をあたってください。
これまで他文化間で表情が持つ意味については「何が共通しているか」にフォーカスしていたので、ここでは逆に何が違うのか見ていくよ。じゃあ、2つ以上の文化間で同じ表情が持つ意味を比較してみよう。
生粋のアメリカ白人と日本人それぞれ40人くらい集めて写真見せて判断してもらった。詳しい条件は原文を読んでね。
対象とした感情
- 怒り
- 軽蔑
- 恐怖
- 嫌気
- 幸せ
- 悲しみ
- 驚き
どうやろう
- 1回目:写真を見て、どの感情かを選ぶ
- 2回目:その感情の強さを9段階で判定
結果
写真を見て感情を判断することにかけてはアメリカ人の方が優秀だった 。ただし、幸せと驚きの正誤率はほとんど一緒だった。
アメリカ
恐怖 < 怒り = 嫌気 = 驚き = 悲しみ < 幸せ
アメリカ人被験者の場合、文化や性別の差で感情が読み取りにくくなることはなかったそうな。
日本
恐怖 < 怒り < 悲しみ = 嫌気 < 驚き < 幸せ
女性の感情を読み取る場合のほうが正解率高かったらしい。
日米どちらも「幸せの感情は一番正解率高かった」。ちなみに幸せな時に使う顔の筋肉は2個。
日米どちらも「恐怖の感情は一番正解率低かった」。ちなみに恐怖を感じた時に使う顔の筋肉は7個。
それ以外については「こうだ!」っていうほどハッキリしたことは言えない。
結果から考えてみよう/まとめ
- 文化ごとに存在する「表情を表すときのしきたり」が結果に影響を与えるっぽいよね。
- 日本人がネガティブな表情を識別できない理由には、「日本社会ではそういう感情を表に出すことがはばかられるので、識別もしにくい」というものがあるんじゃないかな?
- 逆にアメリカでは表情をはっきり示すことが場合によっては推奨すらされるので、識別精度が高い?そう考えると、文化や性別を問わず感情を識別できたことも頷けるかも。
- 日本人は、マスメディアから得た情報で文化的な差の「キャッチアップ」をしている可能性もあるけど、実際のところ文化的な違いで精度に差が出ているのは確かだなあ。
- 日本の男性は「感情を表に出すのは無礼」と考えることがあるので、それが (普段見ない顔だからわかんないよ的な意味で) 正解率の低下につながったのかもしれない。
- 感情の判断しやすさはその感情を表すときに使う筋肉の数と関係してるのかもね。
読んでみての感想
いち日本人として「それはどうよ?」と思うところも多少はありますが、個人的に一番読み取れないと思っていた「恐怖」が難易度 Hardest だという結果には、素直にやっぱそうなんかと思いました。
顔の筋肉ってのはどうなんすかねー、確かにすげー変な顔してると感情わかんないかも。
日本人が「日本人だらけの環境で空気読む力」を育てる時間、北米大陸の人たちは「いろんな文化背景を持った人たちの感情を識別する」能力を育ててるのかも知れませんね。