IT 翻訳者を目指す人へ:業界 5 年目の自分が思ったことを書いてみる

IT 翻訳者を目指す人へ

5 年くらいこの業界で働いてみて個人的に思ったことを並べているだけですので、
あんまり信用しないでくださいね。


この業界に入るために何をしたらいいのか悩んでいる方が多いと感じたので
書いてみました。誰かの/何かの役に立てばいいのですが。


下に行くほど実務的な話になってます。
ではいきます。

IT 翻訳者に求められる、後から身につけにくい 3つの要素

  • 翻訳対象に関する深い知識
  • それを的確に表現する日本語力
  • 書いてあることを正しく理解する読解力

※最後の点に関してのみ英語力が問われますが、それに限定されるわけではなく、何語で書いてあるかに関係なく理解できる「物を読む力」が問われます。

必須レベルの要素:実用的/実務に必要な IT 知識

当たり前ですが、IT 翻訳業界では 各種ツールも IT 的です。
次のことを理解していないと業務に支障が出ます。

基礎の基礎のさらに基礎:
  • Windows の基本的な知識を身につける
    • ファイルの移動とコピー
    • CTRL+C、CTRL+X、CTRL+V、CTRL+Z の機能
    • ネットワークドライブの割り当て

そんなこと? と思うかもしれませんが、ここで躓く人も極まれにいます

  • HTML の超基本的なタグ(P、A、BR などなど)を理解する
基礎の基礎:
基礎:
  • 翻訳メモリの活用方法を理解する
    • コンコーダンス検索とは? 一致率とは?
  • ドキュメント内の変数、相互参照、索引の意味を説明できる

もし貴方が英語堪能でここまで全て OK ならば、
あとはしばらくベンキョを続けるだけで
すぐ見習いレベルに到達できるでしょう。

これ以降は「あったらいいなレベル」の要素について書いてみます。

あったらいいなレベルの要素 1:勉強し続ける姿勢

英語が得意だからとりあえず (敷居が低い) IT 系翻訳者になりたいという人は、
後で IT 知識を身につけなくてはマトモに仕事ができないことに気付くことになります。
なぜなら、美しくない英語で書かれた技術ドキュメント (よくある) を翻訳するには、
技術の概要くらいは説明できるレベルの知識が必要になるからです。
勉強を怠ったまま惰性で仕事を続けると、次のような症状が現れます。

  • 「それ」を多用しすぎて訳文の意味がわかりにくくなってしまう
  • (何が書いてあるか分からないから) 主語/目的語を隠し通そうとして回りくどくなってしまう
  • 全体を通して読んでも何が書いてあるのか分からない

あったらいいなレベルの要素 2:自分の書いた日本語を客観的に読む能力

完全に客観的に見ることはできませんが、時間を掛ければある程度は可能になります。
慣れないうちは課題などを一日寝かせてから読み返してみましょう。

あったらいいなレベルの要素 3:ちょっとだけ専門的な IT 知識

個人的に役立っていると感じる知識は次の 3 つです。

  • 正規表現の基礎
  • よく翻訳の仕事が来るファイル形式の概要 (フレームメーカー、MS Word、RESX、RC、HTML、XML など)
  • 基本的な DOS コマンド
    • 複数ファイルを指定ディレクトリに一括コピーして、作業後に元ディレクトリに戻す
    • 小さなHTMLファイルが大量にある場合に、1 ファイルに Merge して一気にチェックできるようにする


これ以降では、IT 業界では避けて通れない「スタイルガイド」について書いてみます。

スタイルガイドとは

IT 系の翻訳では、クライアントから支給される「スタイルガイド」が用意されており、
翻訳した文章はそれに従うことが求められます。


どんなものなのかは見てもらったほうが早いので


http://www.microsoft.com/language/ja/jp/download.mspx


から日本語版をダウンロードしてざっと眺めてみてください。
一番基本的な要素はだいたい次のようなカンジです。

  • 全角/半角文字間のスペースの有無
    • Valve のゲーム と Valveのゲーム
  • カタカナ複合語間のスペースの有無
  • 記号の全角/半角
    • %と%、()と()
  • 長音の有無
    • サーバとサーバー
  • ある種の用語
    • インターフェイスとインタフェース

こんな細かいことを定義している理由はだいたい次の3つ。

  • 検索精度が良い (Valve と Valve は別の文字列だ)
  • ブランドイメージを統一できる (と考えられている)
  • 表現が統一されているとある種の分かりやすさが生まれる

これらをほとんど無意識に統一できるように練習しておくと、
いざ実務となったときに脳内で余計なリソースを割かずに翻訳に専念できます。


とりあえず思いついたことは全部書けたので今日はコレくらいにします。
もし何か質問などあったら、コメント残していただくか、Twitter ででも話しかけてください(ID は lye_ です)。

...何かの役に立てばいいけど。